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ケムニッツへ行った写真(13/15)

今、ケムニッツでの役目を終えた12枚の写真たちが、どこかの海の上を日本に向けて移動している筈だ。その中で、僕がもっとも帰りを待ちわびているのが、この写真だ。

これは鹿島灘の畳職人。ひょんなことから知り合って(Gallery31参照)、その後も交流が続いている。お父さんも、お母さんも、僕よりずっと年上の人生の大先輩であると同時に、大事な友達だ。

ケムニッツで写真展をやると決めた時、真っ先に電話をして、是非撮らせて欲しいとお願いした。最初はビックリしていたけれど、ドイツの人たちに、日本の職人の姿を見せたいんです、と説得して、OKをもらった。

今年の2月。100m先は大波が叩きつける鹿島灘。冷え込む作業場に朝早くからお邪魔して、まずは見学させてもらう。ポーズをつけてもらうわけではないから、畳を打つ作業の、だいたいの流れを理解して、撮るポイントをイメージする。それにしても職人ってのはカッコいい。そばにいたお母さんに、「おじさん、すごいカッコイイですね」って話したかけたら、「そうでしょう?」と言って恥ずかしそうに笑った。本当に素敵なご夫婦なんだよ。

とにかく、写真が帰って来たら、すぐにおじさんに電話をしよう。そして、写真と一緒に大好きなお酒を持って、またあの笑顔に会いに行くんだ。
PLAUBEL makina67 / Nikkor 80mm F2.8 (TMY)



ケムニッツへ行った写真(14/15)

今回の15点の中にこの写真を入れるかどうか、最後まで迷っていた。

唯一、人間が写っていないという点で、仲間外れである。それに大して面白い写真でもない。他に相応しい写真がいくらでもあった。ところが、ラストの写真に繋ぐために、この写真が、この位置に、どうしても必要であるような気がした。

撮影は神奈川県三浦市。僕には第二の故郷がいくつかあるけれど、三浦もその一つ。三浦の町を歩くと、どうしようもなく切ない気持ちになる。
PLAUBEL makina67 / Nikkor 80mm F2.8 (TMY)



ケムニッツへ行った写真(15/15)

この写真も売れた。

これで、ケムニッツへ行った写真はすべておしまい。

「のび日記」だけで僕の欲求は十分に満たされ、写真展なんて夢のような話だったから、まさか初めてのそれを外国でやることになるなんて想像もしていなかった。このすばらしい機会を僕に与えてくれたMarko Hehlに最大級の感謝をしたい。

本当はその場に行って、ドイツの人たちがどんな顔をしながら僕の写真を見てくれるのか、この目で確かめたかったけれど、いくつかの事情でそれは実現しなかった。でも、その場で3点の写真が売れたという事実は、その無念をカバーして余りある出来事だった。本当に嬉しかった。

僕は職業写真家ではないから、写真を撮るのは単に自分がそうしたいからという、ただそれだけの理由による。しかし、だからといって僕に写真を撮らせるモチベーションが、すべて自分の中から勝手に生まれて来たものかというと、やはりそうではない。いろんな人やモノから刺激を受けて、僕は今日もカメラを構える。沢山の人たちに写真を撮らせていただいている。

そんなことを思う、2007年の秋。

SPECIAL THANKS TO;

Marko Hehl

Philippe Vandenbroeck

2人の名も知らぬドイツ人とNancy Allison / 長幸一さん(長畳店)と奥様 / 最後までケムニッツへ行こうと努力してくれたJimakeiさんとaikoさん、それにのびこさん / fumi、エリコ、shiGe(F.E.S.N.) / 知らずのうちに被写体になってくれたみなさん / 僕の家族たち
Leica MP + Summar 5cm F2 (Fomapan100)



もう、レンズ自体が人格を持って恋に堕ちちゃってる。

そうとしか説明がつかないでしょ。
Semflex / P. Angenieux X1 75mm F3.5 (TX)



45度、あるいは40度ぐらいの、角度の浅い光が窓から差し込んでいる。

晩秋の晴れた朝に、こうして光を見ているのは幸せである。感じるのは、何かの始まりではなく、何かの終わりでもない、ただ茫漠としてそこにある「今」。そして、それこそが幸せというものの正体でもある。

体が弱かった僕が、1ヶ月間、1日も休まずに幼稚園に通えたのは年長の11月だけだった。連絡帳の11月のページには、クマが地面に穴を掘って冬眠している絵があった。「よくがんばりました」と書かれた金色のまるいシールが、そのクマの近くに貼られた。今でもハッキリ覚えている。きらきらと光る、僕の誇らしげな11月。

だから僕は11月が一年のうちで一番好きだ。あのクマは今、どうしているだろうか。金色のシールを後生大事に抱えて、まだ冬眠しているだろうか。
Semflex / P. Angenieux X1 75mm F3.5 (TMY)



列車に乗って、すごく遠いところまで行きたい。

寝台列車とか、いいなあ。最近は昔みたいな寝台列車じゃなくて、狭いながらも個室になっているのが多いんだってね。それでどこに行くかというと、行き先はどこでもいいんだ。とにかく、すごく遠いところだよ。

すごく、ね。
Leica IIIb + Summar 5cm F2 (TX)



海辺で出会ったその犬は、自分が野良であることを少し恥じているような顔をしていた。

恥じる必要なんて無いとか、誇りを持てとか、そんなお門違いなアドバイスが時々あるけれど、まったく意味がない。それどころか、ちょっとカッコイイ台詞を言ったと自己陶酔しちゃったりして、まったくタチが悪い。

コンプレックスがひとつも無いヤツなんて、ただの馬鹿だ。恥ずかしいものは、どこまで行っても恥ずかしいのだ。消え去ることはあっても、決して忘れることはないのだ。そう、一生抱えて生きていくんだよ、その恥ずかしさを。

だからあの犬は、おそらく自分の境遇を恥ずかしいと思ったまま死んで行くんだろう。でも、これは悲しい話ではない。そんな人生も、僕には決して悪いものには思えないのだが。
Zenza BRONICA S2 + Nikkor 75mm F2.8 (TX)



世界には光が溢れていて。

しかしそれと同じの量の闇も存在しているわけだけど。

カメラが前者を写し取る機械で本当に良かったよ。
Kiev 4 + Jupiter8M 50mm F2 (TX)



例えそれが薄汚れた軍港であるにせよ、僕は港町の生まれだから、時々、海を見に行く。

海を見ながら、海の水って何リットルあるんだろう?とか考えていると、大抵のことはどうでも良くなる。
Zenza BRONICA S2 + Nikkor 75mm F2.8 (TX)



エビングハウス(Hermann Ebbinghaus)という人の研究によれば、人間は20分後には42%を忘れ、1日後には74%を忘れる、そういう動物なのだそうだ。

ただし、これは意味の無い文字の羅列を暗記した場合の結果であって、自分にとって意味のある事柄の場合には、決してこの通りではないことが断られている。

だから、あなたがあの日のことを、まるで昨日のことのように覚えているのは、それがインパクトのある出来事であったというだけでなく、あなたにとって意味があったということかも知れない。過ぎ去った日々などでは決してなく、今の自分につながる意味があったということかも知れない。そういう思い出は大事にした方がいい。
Leica MP + Summilux 50mm F1.4 (Fomapan100)


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