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思い立って、南の島へ行くことにした。
Leica M5 + Summilux 35mm F1.4 (TX)



それはそれは静かな毎日でした。
Leica M5 + Summilux 35mm F1.4 (TX)



毎日、夕食の後に写真を撮りに出かけた。

サトウキビ畑の真ん中を突っ切る一本道を、1時間ほど歩く。路面のアスファルトはやがて土になり、小さな岬の突端で行き止まりになった。そこには何かの作業所のような小屋が建っていて、昼間は人が働いている気配があった。

着いた頃には辛うじて明るさを保っていた空も、帰り道は完全に暮れる。道すがら、街灯なんて1本もない。空は満天の星だったけれど、ちょうど新月の時期だったから、あたりは漆黒の闇。誇張でも比喩でもなく、本当に自分の足元が見えなかった。それでも毎日、無事に宿まで戻れたのは、それが一本道だったからだ。

この道で一度だけ、自分以外の人間と遭遇した。暗闇の中を歩いていると、後ろから軽自動車が追い抜いて行った。その軽自動車は急ブレーキを踏み、ぐっとスピードを落として、数秒間、僕の脇を併走した。僕は敢えてそちらの方を見なかったのだけれど、向こうもかなり驚いたことだろう。
Leica M5 + Summilux 35mm F1.4 (TX)



夕方の海、或いはそこからさらに時間を進めて夜の海というものが、常に僕の中に引き起こすある種の感情について、上手く説明できる言葉はないものか。

朝や昼の海が僕に教えてくれることは殆ど無い。それに引き換え、夜の海はあまりにも示唆に富んでいて、時々押し潰されそうになる。
Leica M5 + Summilux 35mm F1.4 (TX)



毎日、陽が出ている間はずっと本を読んでいた。

一度だけ、自転車を借りて朝から砂浜まで行ってみた。
Leica M5 + Summilux 35mm F1.4 (TX)



まあとにかく、そんな風にして南の島ともお別れする時が来た。

場所がどこであろうと、観光地巡りのようなことには興味が無いし、目的も無くただ歩き回るか、あるいはひたすら何もしないことが僕にとっての旅だから、今回もとても満足した。

そして、一週間前にオフィスの机の上に放り出してきた、色んなモノやコトのことを思い出して、ちょっと憂鬱になった。
Leica M5 + Summilux 35mm F1.4 (TX)



写真と文章を組み合わせることについての見解だとか是非について訊かれても、僕には分かりません。そんなこと考えたこともないし、考える予定もありません。

写真から見た文章は、微妙にサイズの合わない、安っぽい額縁のようなものだし、文章から見た写真は、ヘタクソな挿絵のようなものです。

これで答えになっているといいのですが。
Leica M5 + Summilux 35mm F1.4 (TMY-2)



のびさんって、ファインダー覗きながら笑ってるよね。

そう仲間に言われて、へえと思った。

ピントを合わせる。構図を決める。この2つがファインダーを覗きながらしている作業だけど、もちろんそんなことが楽しくて笑っているわけではない。

あの小さな穴から世の中を眺める。これは一つの「体験」である。そこに何が見えるか。いつもと変わらない、見慣れた日常だ。しかし次の瞬間には、シャッターが切られるという一大スペクタクルが待っている。見慣れた日常は一瞬にして凍りつき、封印され、永遠に保存される。自分の身に何が起きるかも知らずに、ファインダーという名の劇場で「いつもどおり」を演じているヒトやモノたちの、最期の瞬間を僕は見届ける。

そりゃ、笑みもこぼれるというものだ。
PLAUBEL makina67 / Nikkor 80mm F2.8 (TMY-2)



停めた車の中で、かなり長い時間、話し合った。僕は相槌を打つタイミングを間違えないように気をつけながら、時々写真を撮っていた。どうでもいいから早く家に帰りたかった。
Leica M5 + Elmar 3.5cm F3.5 (TMY-2)



音楽はだいぶ前に消した。もはや耳は何も聞いていない。鼓膜が振動するところまでは正常だが、その後の処理はすべて停止している。その代わりに、テグジュペリの「夜間飛行」の主人公の名前を一生懸命思い出そうとしていた。あの非情な支配人ではなく、パイロットの方。
Leica M5 + Elmar 3.5cm F3.5 (TMY-2)


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