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娘が今年から通い始めた中学校の、運動会へ行った。

それは、3年生全員によるクラス対抗リレーの時に起きた。

ある男子生徒が、トラックを半周走る間にゴボウ抜きを演じ、それまで下位に甘んじていた自分のクラスを一気に2位にまで引き上げた。筋肉質で背が高く、坊主頭の、いかにも運動神経抜群という感じの男子だ。興奮と大歓声。

ところが、彼がバトンを渡す相手は、ちょっと太めの、明らかに走るのが遅そうな女子生徒だった。全員が参加するから、チームは男女混成だ。

正直言うと、僕も「ああ」と思った。せっかく2位になったのに、ここでまた抜かれちゃうんだな、と。

バトンが女子生徒の手に渡った。

そして、予想もしなかったことが起きた。
Leica M5 + Summilux 35mm F1.4 (TX)



想像通り、彼女は遅かった。いや、想像以上に遅かった。

次々に抜かれ、あっという間に最下位になった。

しかし、彼女はトラックの上で孤独ではなかった。

ついさっき、彼女にバトンを渡した男子生徒が、そのまま彼女に付き添って走っていた。トラックの内側を、彼女を励ましながら伴走していた。

バトンを次の走者に渡すポイントが、果てしなく遠く感じられる。それでも彼女は、男子生徒を脇に従えて必死に走った。

無事にバトンを渡し終えると、彼女は少し恥ずかしそうに笑って下を向いた。男子生徒は手を叩いて、彼女の頑張りを称えた。

話はこれでおしまい。

年を重ねて大人になるということは、いろいろなことを身に付けるということだ。だがその一方で、たくさんの大切なことを、どこかに忘れてもくる。

それでも、その忘れ物を思い出させてくれる瞬間が、人生には時々こうして訪れる。
Leica R3 + Super-Angulon 21mm F4 (TX)



Leica R3 + Super-Angulon 21mm F4 (TX)



それに較べて俺は・・・。

そう思うことが、この歳になって多くなってきた。
Leica M5 + Elmar 3.5cm F3.5 (TX)



僕は聖人君子ではない。

だいぶ長いこと、この言葉に寄りかかってきた。

開き直りは、自分がもっとも忌み嫌うことの筈なんだがな。
Leica M5 + Elmar 3.5cm F3.5 (TX)



シャッターを1回押すたびに、フィルムを1本撮り終えるごとに、悩み事が増えていく。

そして現像で、大橋巨泉風に言えば「さらに倍」。

浴室の天井からぶら下がったフィルムが、ゆらゆら揺れて嗤う。

今に見てろよ、お前ら。
Leica M5 + Elmar 3.5cm F3.5 (TX)



Leica M5 + Summilux 35mm F1.4 (TX)



例えばそれが何かの趣味であったり、ブログであったり、あるいは今夜のおかずを作ることであったり・・・とにかくこれから何かをしようという時に、相応の覚悟をせぬまま始めてしまう人を、僕は尊敬しない。

始めて(あるいは始まって)しまってもなお、まだ覚悟を決められない人を、僕は軽蔑する。

人だけじゃなくてモノだってそうだ。貧乏のクセに金遣いが荒い自覚はあるが、それにしても実用寿命がせいぜい2〜3年の、まるで覚悟の決まってないカメラに金を払う気にはなれない。
Leica M5 + Summilux 35mm F1.4 (TMY)



つまり、いろんな人のおかげで写真を撮れているのだということ。

すべて自分一人で作り上げてきたなんて、ゆめゆめ思ってはならぬということ。

相手に対して何かを赦している自覚がない人は、自分が赦してもらっていることにも鈍感だ。鈍感というのは恐ろしい。自分の思い込みを正すきっかけは永遠に訪れず、ゆえにそこには救いがない。
Leica M6 + Canon 35mm F1.5 (TX)



正しいと思うことをした。
すべきと思うことをした。
つまり、これ以上やることはない。
僕はもう何もしないでいい。
Plaubel Makina67 / Nikkor 80mm F2.8 (TX)


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